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「マンデリン」や「トラジャ」など、唯一無二の複雑な風味で世界中を魅了するインドネシアコーヒー。多数の島々からなるインドネシアは、島ごとの気候や風土を活かした個性豊かなコーヒーが栽培されています。
本記事では、インドネシアコーヒーの魅力を徹底的に深堀りして解説していきます。インドネシアコーヒーが持つ味わいの特徴や、多様な産地の解説はもちろん、現地で楽しまれている飲み方やコーヒーマリアージュのアイデアまで幅広くご紹介します。
ぜひこの記事を通して、奥深く神秘的なインドネシアコーヒーの魅力に触れてみてください。
インドネシアコーヒーの特徴|大地を思わせる重厚さとスパイシーな味わい

インドネシアは、ベトナムに次ぐ東南アジア有数のコーヒー産地。最新(2023年)のデータでは、世界のコーヒー生産量第3位に位置しています。
そんなインドネシアで生まれるコーヒーは、大地を思わせる重厚なコクと、ハーブやスパイスのような独特の風味が特徴です。インドネシアコーヒーを知るためには、次の3つのポイントを押さえておきましょう。
- ⚫︎代表銘柄「マンデリン」に代表される、力強くスパイシーな風味
- ⚫︎生産の90%が「ロブスタ種」が主流
- ⚫︎島ごとに異なる個性豊かなコーヒーが生まれる多様性
インドネシアで栽培されているコーヒー豆のおよそ90%が「ロブスタ種(カネフォラ種)」です。ロブスタ種は苦みが強く、濃厚でしっかりとした味わいが特徴。このロブスタ種は、インスタントコーヒーやブレンドのベースとして、世界のコーヒー消費を支えています。
一方、スペシャルティコーヒーの市場で評価されているのは、残り10%にあたる生産量の「アラビカ種」です。高品質なマンデリンにはアラビカ種が使用されており、奥深い風味がコーヒーファンに愛されています。
なお、インドネシアは非常に珍しい「コピ・ルアク」(ジャコウネコの糞から採取されるコーヒー)の産地としても有名です。
インドネシアにおけるコーヒー栽培の歴史とは

インドネシアでコーヒー栽培がはじまったのは、オランダ植民地だった17世紀後半のこと。ジャワ島にいた総督の元に贈られたコーヒー苗から栽培の歴史が始まりました。
1830年からはオランダ領東インドの強制栽培制度によってコーヒーの栽培はインドネシア全土に広まり、大規模なプランテーションによる栽培が行われるようになります。
順調に成長を続けていたコーヒー産業でしたが、19世紀後半に流行した「サビ病」によってインドネシアのコーヒーは壊滅的な打撃を受けてしまいます。当時栽培されていた「アラビカ種」はサビ病に弱く、多くのコーヒー農園では病気に強い「ロブスタ種」への植え替えが急速に進められました。被害を免れた数少ない一部のアラビカ種は今でも標高の高い畑で大切に栽培され続けており、「マンデリン」や「トラジャ」といった高品質なコーヒーを生み出しています。
コーヒー豆の品種「アラビカ種」と「ロブスタ種」の違いについてより詳しく知りたい場合は、以下の記事も合わせて参考にしてください。
コーヒー産地としてのインドネシア 代表産地と銘柄紹介

インド洋に浮かぶ1万を超える島々からなるインドネシアは、高温多湿の熱帯性気候の国です。赤道直下に位置しており、コーヒー栽培に適していると言われる「コーヒーベルト」の範囲内にあります。
インドネシアの気候や環境は、コーヒー栽培に適している以下の条件がそろっています。
- ⚫︎火山由来のミネラルが含まれた肥沃な土壌
- ⚫︎コーヒーの成長に欠かせない豊富な雨量
- ⚫︎良質なアラビカ種を育む高地の畑
このような恵まれた自然の中で栽培されたインドネシアのコーヒーは、島ごとに異なる気候風土が反映され、銘柄ごとに個性豊かな味わいを楽しめます。産地の違いを比べるのも、インドネシアコーヒーの楽しみ方のひとつと言えるかもしれません。
個性豊かなインドネシアの島々と、そこで生まれるコーヒー
インドネシアの中でも特に有名なコーヒー産地である3つの島と、代表的な銘柄を紹介します。

1.スマトラ島
インドネシアを代表するコーヒー銘柄「マンデリン」が生まれるのが、インドネシア西部に位置するスマトラ島です。
マンデリンは力強いコクとスパイスやハーブの風味が感じられるコーヒーで、世界中で高く評価されています。
2.ジャワ島
首都ジャカルタがある、インドネシア中心部の島です。インドネシアにおけるコーヒー栽培が始まった歴史ある場所で、ここで生まれるコーヒーは「ジャワコーヒー」と呼ばれます。
栽培されている主な品種はロブスタ種で、酸味は少なく香ばしく強い苦みが特徴です。
3.スラウェシ島
スマトラ島に次いで高品質なアラビカ種が栽培されている産地です。代表銘柄は「トラジャ」といい、かつては幻のコーヒーと呼ばれるほど有名でした。
トラジャは甘みと酸味、スモーキーさと滑らかさなど、様々な要素がバランスよく感じられる高級コーヒーです。
インドネシアの代表銘柄「マンデリン」

インドネシアコーヒーの中でもとりわけ高い知名度と人気を誇っているのが「マンデリン」。マンデリンは、スマトラ島北部の「北スマトラ州」と「アチェ州」で栽培されているアラビカ種のコーヒーのみが名乗れる銘柄です。
ちなみに「マンデリン」という名前は、この地域に住む「マンデリン族」という民族の名前に由来しています。
マンデリンの味わいとは?ハーバルでスパイシーな深みある風味が特徴
マンデリンの味わいは、他のコーヒー産地には見られない独特な味わいが魅力です。大地を思わせるアーシーなコク、ハーブやシナモンを思わせる複雑さがあり、エキゾチックやエスニックなどと表現されることがあります。
酸味は控えめで、しっかりとした苦味と甘みのバランスが絶妙なマンデリン。その唯一無二の個性は、次に解説するインドネシア独自の精製方法によって生み出されています。
インドネシア独自の「スマトラ式」精製法とは

コーヒーの味わいに大きく影響するのが、収穫したコーヒーチェリーから中の豆を取り出す「精製」と呼ばれる工程です。インドネシア、特にスマトラ島では「スマトラ式(現地語でギリン・バサ)」と呼ばれる特殊なコーヒーの精製法が用いられています。
スマトラ式の手順
一般的なコーヒー豆の精製「ウォッシュト製法」では、コーヒーチェリーの果肉と粘着物を除去し、十分に乾燥させてから脱穀(豆を取り出す作業を)します。
しかし高温多湿で雨季が長いインドネシアでは、一度にコーヒーを乾燥させることが難しく、豆が傷んでしまうリスクがあります。そこで、乾燥時間を短くするために生み出されたのが「スマトラ式」です。
- ▼スマトラ式の精製手順
- 1.収穫したコーヒーチェリーから、果肉を取り除く
- 2.粘着物をつけたまま、半日から1日程度袋などに入れて発酵・軽く乾燥させる(1度目の乾燥)
- 3.豆が完全に乾燥しきらないうちに脱穀する
- 4.脱穀したコーヒー豆を天日干しし、完全に乾燥させる(2度目の乾燥)
通常は1度で済ませる乾燥の工程を2度行っている点が、スマトラ式ならではのユニークなポイント。これは、乾燥の工程を短くするために考えられた工夫です。なお、スマトラ式で精製された豆は、他にはない不思議な深緑色の色合いになります。
インドネシアコーヒーの格付け等級

インドネシアでは、コーヒー豆の品質を評価するために独自の格付け基準が設けられています。格付けは「欠点豆の数」によって以下のように分類されます。
▼インドネシアコーヒーの格付け基準
| 基準 | 300g中の欠点豆の数 |
| G1 | 0~11個 |
| G2 | 12~25個 |
| G3 | 26~44個 |
| G4 | 45~80個 |
| G5 | 81~150個 |
マンデリンには上記の基準とは別に、「SG(スーパーグレード)」と呼ばれる特別な等級があります。SGは、マンデリンの中でも限られた高地の地区で栽培されたコーヒーだけに与えられる等級です。最高品質のマンデリンを味わってみたい方は、専門店などで「SG」表記のコーヒーを探してみてください。
インドネシア産コーヒーのおすすめ製品紹介
インドネシア産のコーヒー「マンデリン」をブレンドしたコーヒーの中から、おすすめの製品を2種類紹介します。
UCC DRIP POD マンデリン&ブラジル

「DRIP POD マンデリン&ブラジル」は、産地を旅するように楽しめるカプセル式ドリップコーヒーメーカーの「ドリップポッド」専用カプセルです。
マンデリンらしい大地を思わせるハーブやスパイスの香りを引き立たせるため、焙煎度合いを少し浅めに設定したこだわりのコーヒーです。ブラジルとブレンドすることでマイルドな甘味をプラスし、風味豊かな味わいを引き出しました。
ミルク割りだけでなく、炭酸割りやハーブを乗せたアレンジなど、アイデア次第で様々な味わい方を楽しめます。
ヒルス ハーモニアス スマトラマンデリンブレンド

※画像引用:ヒルス ハーモニアス スマトラマンデリンブレンド 110g (粉) | UCC公式オンラインストア | コーヒー 通販
インドネシアコーヒーの最高グレードである「G1グレード」のマンデリンをブレンドした、華やかな風味と独特のコクのある味わいが特徴のコーヒーです。
熱帯雨林が広がる豊かな自然の中で育ったマンデリンの、芳醇な風味が感じられる一品になっています。ぜひ一杯目は、ブラックコーヒーでお楽しみください。
インドネシアコーヒーを美味しく飲む方法

個性豊かなインドネシアコーヒーが持つ魅力を最大限に引き出す、おすすめの飲み方を4つ紹介します。
1.マンデリンやトラジャコーヒーなら、まずはブラックで
高品質なアラビカ種の「マンデリン」「トラジャ」などのインドネシアコーヒーを手に入れたなら、まずはホットのブラックコーヒーを丁寧にドリップして楽しんでみてください。その銘柄が持つ唯一無二の個性をはっきりと感じられることでしょう。
マンデリンやトラジャは中炒りから深炒り焙煎の豆が多いため、やや低温(85度)のお湯でじっくりとハンドドリップするのがおすすめです。低温で抽出することで複雑な香りを引き出しやすくなり、バランスのよい飲み口になります。
ハンドドリップのやり方を詳しく知りたい場合は、以下の記事をあわせてご確認ください。
2.ホットコーヒーアレンジ「ティラミスショコラオレ」

インドネシアコーヒーを使ってカフェのようなアレンジコーヒーにチャレンジしたい場合、濃厚なコクとほろ苦さが美味しい「ティラミスショコラオレ」がおすすめです。まるでデザートのようにボリュームと満足感のある一杯が楽しめます。
- ▼材料(1人分)
- ⚫︎濃いめに抽出したコーヒー:70ml
- ⚫︎生クリーム:70ml
- ⚫︎マスカルポーネチーズ:10g
- ⚫︎チョコレートソース:20g
- ⚫︎ココアパウダー:適量
- ▼作り方
- 1.カップにコーヒーを濃いめにドリップする
- 2.ボウルに軽く泡立てた生クリーム、マスカルポーネチーズ、チョコレートソースを加えてよく混ぜ合わせる
- 3.1.のカップに2.を注ぎ入れ、ココアパウダーをトッピングする
3.アイスコーヒーアレンジなら「コーヒーモヒート」

暑い季節やリフレッシュのお供にインドネシアコーヒーを楽しむなら、アイスコーヒーアレンジがおすすめです。インドネシアコーヒーの持つハーバルなフレーバーに、ミントやライムの香りが調和する「コーヒーモヒート」の作り方を紹介します。
- ▼材料(1人分)
- ⚫︎濃いめに抽出したアイスコーヒー:70ml
- ⚫︎ガムシロップ:5g
- ⚫︎炭酸水:100ml
- ⚫︎ライム:1/4カット
- ⚫︎ミント:適量
- ⚫︎氷:適量
- ▼作り方
- 1.濃いめに抽出したコーヒーにガムシロップを加えて軽く混ぜ、たっぷりの氷で急冷する
- 2.背の高いグラスにミントを加えて軽く潰す
- 3.グラスに氷を入れて1のコーヒーを注ぎ、上にミントとライムを飾る
- 4.最後に炭酸を注ぎ入れる
4.ジャワコーヒーなど、ロブスタ系は「カフェオレ」で
力強い苦みと香ばしさが特徴のジャワコーヒー(ロブスタ種)などは、ミルクとの相性が抜群です。濃いめに抽出したコーヒーにたっぷりとミルクを注いだカフェオレで、コーヒーのコクとミルクの甘みが混じり合った格別の美味しさを楽しんでみてください。
砂糖の甘さをプラスしたい場合は、シロップの代わりに「コンデンスミルク」を加えるのもおすすめです。
おすすめコーヒーマリアージュ

インドネシアコーヒーの深みとエキゾチックな風味を引き立てる、コーヒーマリアージュのアイデアを紹介します。ぜひスイーツタイムや普段の食事のひとときに試してみてください。
スパイスの風味がベストマッチ「シナモンロール」
スパイシーな風味が特徴のインドネシアコーヒーには、同じくスパイスの風味を活かしたスイーツがよく合います。特に、香りにシナモンのエッセンスが感じられる「マンデリン」に合わせたいのが「シナモンロール」です。アイシングの甘さがコーヒーの苦味ともマッチし、至福のスイーツタイムになります。
バナナを使ったインドネシアのスイーツ「ピサンゴレン」
「ピサンゴレン」とは、バナナに衣をつけて油で揚げたインドネシア定番スイーツです。とろけるようなバナナの甘さと濃厚な口当たりには、深炒りのインドネシアコーヒーがとてもよく合います。
バナナの南国感と、インドネシアコーヒーの持つエキゾチックな風味は最高の組み合わせのひとつ。インドネシアらしさを感じられるおすすめマリアージュです。
ランチのお供に!「ナシゴレン」とインドネシアコーヒーのマリアージュ
濃厚なインドネシアコーヒーはデザートにぴったりですが、「アイスコーヒー」にすれば食事とのペアリングも楽しめるようになります。
ランチに楽しみたいコーヒーマリアージュのひとつが、インドネシア風チャーハンの「ナシゴレン」とインドネシアコーヒーの組み合わせです。ナシゴレンのスパイシーな味付けと、アイスコーヒーの爽やかな苦味は夏にピッタリの組み合わせ。爽快感あるスパイシーな刺激を楽しんでみてください。
現地インドネシアでの独特なコーヒーの飲み方とは?

インドネシアは、コーヒー生産だけでなく国内での消費も盛んな国です。ジャカルタなどの都市部にはおしゃれなカフェが並び、現地の若者を中心にカフェ文化が花開いています。
そんなインドネシアには、「コピ・トゥブルック」と呼ばれる伝統的なコーヒーの飲み方があります。
- ▼「コピ・トゥブルック」の淹れ方
- 1.カップに極細挽きにしたコーヒー粉と砂糖を入れる
- 2.沸騰したお湯を直接カップに注ぎ入れる
- 3.かき混ぜたら数分置き、コーヒーの粉が底に沈殿するのを待つ
- 4.粉が沈んだら上澄みを静かに飲む
ペーパーフィルターを通さない分、コーヒーの風味や成分をダイレクトに味わえるワイルドな飲み方です。もしインドネシアを訪れる機会があれば、ぜひ現地のコーヒーを現地の楽しみ方で味わってみてはいかがでしょうか。
まとめ|個性豊かなインドネシアコーヒーを楽しもう
世界第3位のコーヒー生産量を誇り、島ごとに多様な個性を持つインドネシアコーヒー。その魅力は、大地を思わせるコクとスパイシーな風味にあります。
代表的な銘柄「マンデリン」の奥深い味わいを堪能したり、苦みを活かしたアレンジに挑戦したりと、インドネシア産コーヒーの楽しみ方は様々です。ぜひ本記事を参考に、あなただけのお好みの銘柄や楽しみ方を見つけてみてください。