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赤道を挟んで南北緯25℃のエリアに位置する国々で栽培されているコーヒー。その生産国は75ヵ国以上あるとされています。コーヒーと言ってもその種類や味わいは様々。数ある中から自分好みのコーヒーを見つけることができれば、さらにコーヒーの楽しみ方は広がります。
本記事では、コーヒーの味わいに影響する要因からコーヒー豆の産地ごとの味わいを解説します。自分好みのコーヒーを探したいという方やシーンにあわせてコーヒーを選びたいという方はぜひ参考にしてみてください。
コーヒー豆の味わいに大きく影響するのは『産地』『加工処理』『品種』『焙煎』
『産地』による影響
コーヒーの味わいに影響を与える要因の1つである『産地』。特に標高の違いによる気温や日照時間の影響は、コーヒー豆の成長スピードや糖度の蓄積に直接関係しています。
標高が高い地域で収穫された豆は一般的に高品質とされ、フルーティーで複雑な風味や鮮やかな酸味を持つ傾向があります。これに対して、標高が低い地域の豆はよりまろやかで甘みがあり、バランスのとれた味わいが特徴です。
コロンビアは、昼夜の寒暖差の激しい標高の高い冷涼な山岳地域で栽培が盛んです。このため、コロンビア産のコーヒーは、果実が引き締まり、甘さが種子に凝縮されるため、キレのよい酸味や甘みが生まれ、マイルドで繊細な味わいと言われます。
対照的にブラジルは、比較的標高の低い広大な土地で栽培されることから、温暖で安定した気候の影響を受けて、酸味が穏やかでナッツのような風味、滑らかな口当たりが特徴です。甘みとコクがあり、バランスのとれた味わいと言われ、バランスのとれた親しみやすい味わいのため、ブレンドのベースとしても広く利用されています。
このように、収穫された地域の標高は、味わいに影響を与える要因として認識されており、コーヒー生豆の格付けの指標の一つとしている生産国は多くあります。実際に標高が高い地域でつくられたコーヒー豆は、プレミアムグレードやスペシャルティコーヒーとして市場で高く評価されます。
収穫後の『加工処理』による影響
コーヒーの味わいに影響を与えるもう一つの重要な要因が、収穫後の加工方法である『精製(プロセス)』です。精製方法には主に「ウォッシュド(水洗式)」「ナチュラル(非水洗式)」「セミウォッシュド」などがあります。それぞれの方法によって、コーヒーの味わいは大きく変化します。
ウォッシュド | す。クリーンな味わいが特徴で、フルーティーさや明るい酸味が際立ちます。特に、すっきりとキレのある酸味を強調したい場合に最適な精製方法です。 |
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ナチュラル | れて口当たりがしっかりとした印象の味わいが特徴です。複雑な風味を持ち、ベリー系の果実味やワインのような豊かな風味が楽しめます。 |
セミウォッシュド | 的な風味を持ちます。果肉の一部が残っているため、甘みがあり、酸味も抑えめでバランスが良いのが特徴です。コクのある豊かな味わいが得られます。「ハニー」の名前の由来の通り、甘い華やかなはちみつのような風味や花のような香りと表現されることもあり、複雑で豊かな風味が楽しめます。 |
このように、精製方法の違いは、コーヒーの甘さ、酸味、クリーンさに直接影響し、同じコーヒー豆でも異なる風味を引き出すことが可能です。
『品種』による影響
コーヒーの品種も味わいに大きな影響を与える要素です。品種はコーヒーの「遺伝子」として、大きさなどの形状、病害耐性、栽培のしやすさ、そして風味の個性に影響を与えます。
その種は、分類体系上で103種ほど知られていますが、現在商業的に栽培されているのは、「アラビカ種」、「ロブスタ種」の2種です。この代表的な品種の味わいの特徴をそれぞれ紹介します。
アラビカ種 | 特徴です。伝統的な品種であるティピカやブルボンなどの品種は、甘みと柔らかな酸味があり、繊細で上品な味わいが楽しめます。また、ゲイシャ種はフローラルな香りと華やかな酸味で有名な品種です。高品質なアラビカ種として人気が高く、スペシャルティコーヒーの世界では一目置かれています。 |
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ロブスタ種 | 心の味わいです。ロブスタは、ロブスト(robust=強健でがっしりした)という言葉が由来とされています。その言葉からも分かる通り、病害耐性が強いのが特徴です。しかし、味覚的にはストレートの飲用には適しておらず、ブレンド用として利用されています。 |
品種はその地域の気候や土壌との相性によっても味わいが変わるため、栽培環境によって風味が異なることも魅力の一つです。
『焙煎』による影響
コーヒー生豆に熱を加えて炒ることを『焙煎』といい、この工程によって特有の風味や香りをもつ炒豆になります。『焙煎』はコーヒーの味わいを決定づける最も重要な工程のひとつです。焙煎の度合いによって甘味、酸味、苦味、コクなどの味わいや香りが大きく変わります。
ミディアム~ハイロースト:明るい酸味とフローラルな香りが際立ちます。豆本来の味わいを活かした繊細な風味が特徴で、産地や精製方法の個性が感じられます。
シティロースト:酸味と苦味のバランスが取れており、甘みが引き立ちます。程よいコクと風味の調和が楽しめ、万人に好まれる焙煎度合いです。
フレンチロースト: 豆の表面にオイルが浮き出るほど焙煎されたもので、強い苦味と深いコクが特徴です。酸味は抑えられ、ビターな風味が好まれる方に向いています。
同じコーヒー豆でも焙煎の度合いによって味わいの印象は大きく変わります。自分好みの焙煎度合いを見つけることが、理想の一杯を楽しむ鍵になります。
代表的なコーヒー産地とその特徴
コーヒーの味わいに大きく影響する「産地」の違いを知ることで、豆を選ぶ際の迷いや失敗を減らすことができます。自分にぴったりのコーヒーを見つけるために、産地ごとの味わいの特徴を詳しく解説します。
ブラジル
ブラジルは世界最大のコーヒー生産国として知られています。標高800~1200mの比較的平坦で広大な台地で栽培されており、栽培地域全体にわたって温暖な気候が安定して続き、日照量が多いため、酸味が
味わいは、ナッツやチョコレートのような香ばしい風味と甘み、滑らかな口当たりが特徴です。酸味が控えめでバランスの取れた味わいで、ブレンドのベースとしても重宝されます。おすすめの焙煎度合いは、甘さとコクがしっかりと感じられる、シティローストです。
コロンビア
コロンビアのコーヒーは、アンデス山脈の高地で栽培され、標高1200~2200mと高く、昼夜の寒暖差が大きいことが特徴です。この寒暖差により、コーヒーチェリーがゆっくりと成熟していきます。このため、甘さが凝縮され、フルーティーでクリーンな風味が生まれます。加工処理はウォッシュドプロセスが一般的で、品質の高いコーヒーが多く生産されています。
味わいは、明るい酸味と甘みのバランスが良く、フローラルやシトラスのような風味が楽しめます。クリーンでスムーズな口当たりが特徴です
おすすめの焙煎度は、コーヒーのもつ明るい酸味や甘みが味わえる、ミディアム~ハイローストです。
グァテマラ
グァテマラのコーヒーは、標高1200~2000mの高地で栽培されています。特に火山地帯が多く、豊富なミネラルを含む肥沃な土壌で育まれるコーヒーは、風味に複雑さがあり、酸味とコクのバランスが取れた味わいが特徴です。加工処理はグァテマラコーヒーのもつ複雑な風味や明るい酸味を引き立てるウォッシュドプロセスが一般的です。
味わいはチョコレートやキャラメルのような甘さに、スパイシーな風味やベリー系の酸味が加わり、複雑で奥深い味わいが楽しめます。
おすすめの焙煎度は、豊かな甘みとコクが味わえる、ハイ~シティローストがおすすめです。
ジャマイカ
ジャマイカのコーヒーは、主にブルーマウンテン山脈の標高900~1700mの高地で栽培されています。年間を通じて霧に覆われることが多く、冷涼な気候のもとゆっくり成熟することから、甘みと酸味のバランスが取れた繊細な風味をもつコーヒーが育まれています。加工処理はクリーンで透明感のある味わいが引き出される、ウォッシュドプロセスが一般的です。
その味わいは、バランスが非常によく、優雅な酸味と控えめな甘み、滑らかな口当たりが特徴です。微かなナッツやフローラルな香りも楽しめます。
おすすめの焙煎度合いは、バランスのとれた酸味、甘み、苦味が味わえる、ミディアム~ハイローストです。
エチオピア
コーヒーが発祥した地として知られるエチオピア。エチオピアのコーヒーは、野生の品種や自生している木々から栽培されることが多く、その多様性が風味の幅広さと個性をもたらし、地域ごとに個性的な味わいのコーヒーがあることが知られています。加工処理は甘くフルーティーな風味が際立つナチュラルプロセスとクリーンで透明感のある味わいのウォッシュドプロセスの両方が採用されています。
その味わいは、ジャスミンやベルガモット、ベリー系のフルーティーな風味が特徴的です。明るい酸味と華やかな香りが楽しめます。
おすすめの焙煎度合いは、華やかな香りが味わえる、ミディアムローストです。
タンザニア
タンザニアのコーヒーは、キリマンジャロ山麓の標高1200~1800mの高地で栽培されています。高地特有の昼夜の寒暖差と火山性の肥沃な土壌に恵まれた環境が、明るい酸味とフルーティーな香りをもたらしています。加工処理は、クリーンで透明感のある味わいを引き出す、ウォッシュドプロセスが用いられています。
その味わいはシトラスやベリーのような酸味と、スパイシーな風味が特徴です。クリーンで爽やかな飲み心地が楽しめます。
おすすめの焙煎度は、タンザニアの特徴的なフローラルやスパイシーな風味が味わえる、ミディアムローストです。
インドネシア
インドネシアのコーヒーは、ジャワ、スマトラ、スラウェシなどの島々で栽培されています。年間を通じて高温多湿な熱帯気候であることから、この地域ではスマトラ式といわれる加工処理が採用されています。果肉を除去後に段階を踏んで乾燥させる方法です。この方法は、独特な
風味と深いコク、アーシーと表現される土のようなニュアンス、スパイシーなフレーバーをもたらします。おすすめの焙煎度は、スパイシーな風味やチョコレートのような深いコクが味わえる、シティローストです。
シーン別におすすめしたいコーヒー豆の選び方
味わいのバリエーション豊かなコーヒーは、シーンや気分に合わせて選ぶことで、より豊かなひとときを楽しむことができます。シーンごとにおすすめのコーヒー豆の選び方をご紹介します。その時々の気分にあわせて選びたい時の参考にしてみてください。
朝の目覚めの一杯に
目覚めの朝は、爽やかな酸味とマイルドな味わいが特徴のコーヒーがおすすめです。明るいフルーティーな風味やシトラス系の酸味が感じられるコーヒーは、心地よい目覚めの朝にぴったりの味わいです。エチオピアのコーヒー豆は、爽快感と華やかな風味が特徴で、朝のスタートにぴったりです。ミディアムロースト程度に仕上げられた豆を選ぶと、バランスの良い味わいが楽しめます。
ランチ後のリフレッシュに
ランチ後のコーヒーには、切れのある酸味とコクのあるコーヒーがおすすめです。明るい酸味と豊かなフルーティーな風味が特徴のケニアやグァテマラの豆は、ランチ後のリフレッシュタイムにおすすめです。口に含んだ瞬間、柑橘やベリーのような爽やかな果実の香りが広がり、食後の満腹感を軽やかにリセットしてくれます。リフレッシュしたい時には、ぜひこの明るくフレッシュなコーヒーで気分をリセットしてみてはいかがでしょうか。
午後のリラックスタイムに
午後のリラックスタイムには、深いコクとまろやかな風味が楽しめるコーヒーが最適です。インドネシアのマンデリンは、アーシーでスパイシーな風味としっかりとしたボディが特徴で、深呼吸をしながらゆったりとくつろぎたい気分の時におすすめです。また、ジャマイカ ブルーマウンテンのような風味のバランスが優れたコーヒーは、優雅なひとときを演出します。少し贅沢な気分を味わいたいなら、フローラルで複雑な香りのゲイシャ品種のコーヒーもおすすめです。
食後のデザートタイムに
デザートタイムには、フレーバーに甘い香りのあるコーヒーがおすすめです。エチオピアのナチュラルプロセスのコーヒーは、ベリー系のフルーツ感や甘さが際立ち、チョコレートケーキやベリーのタルトなどとの相性が抜群です。また、グァテマラのコーヒーは、ナッツやキャラメルの風味があり、クリーンでバランスの良い味わいが食後に最適です。
自分に合ったコーヒースタイルを見つけよう
産地や味づくりによって生まれる風味豊かなコーヒーの世界。気分やシーンに合わせて選ぶことで、楽しみ方がさらに広がります。産地ごとの特徴やシーン別のおすすめを参考に、日々のコーヒータイムをより豊かで特別な時間にしてみてください。