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世界中のコーヒー愛好家を魅了してやまない国、エチオピア。酸味や華やかな香りが特徴のエチオピアコーヒーは、スペシャルティコーヒーの世界でも不動の人気を誇ります。
本記事では、エチオピアコーヒーの味わいの特徴から、産地による風味の違い、精製方法、そして現地の文化まで、その魅力を余すことなく解説していきます。 これからエチオピアコーヒーを試してみたい方も、もっと深く知りたい方も、ぜひこの「コーヒーの聖地」の味わいの秘密に触れてみてください
エチオピアコーヒーの特徴|他にはないエレガントな風味

まずは、エチオピアコーヒーが世界中で愛される3つの大きな特徴を紹介します。
1.華やかな香りと果実のような酸味
エチオピアコーヒー最大の特徴は、「圧倒的に華やかな香り」と「フルーティーな酸味」です。コーヒーと言えば苦みをイメージする人も多いかもしれませんが、上質なエチオピアコーヒーに関しては苦みやえぐみは控えめ。なかには「アールグレイティー」や「ハーブティー」にたとえる例もあるほど、フローラルで上品な香りが魅力です。
エチオピア産のコーヒーを楽しむ際はその「エレガントさ」「きれいな酸」に注目してみると、他の産地との違いを明確に感じられることでしょう。
2.アラビカ種コーヒー発祥の地
コーヒー好きならおなじみの豆品種である「アラビカ種」。流通している高品質なコーヒーの多くがこのアラビカ種ですが、実はエチオピアは「アラビカ種のコーヒー発祥の地」だと言われています。
アラビカ種は非常にデリケートで、標高・気温・雨量などの条件が揃わないと育たない、栽培の難しい品種です。しかしエチオピア(アビシニア)高原には、はるか昔から野生のコーヒーノキが自生しており、現在でも森の中に「原生種(エチオピア原種)」と呼ばれる、品種改良されていない野生に近いコーヒーが無数に存在しています。近年注目されているアラビカ種の希少品種「ゲイシャ」も、エチオピア原産の品種です。
そんなエチオピアには、コーヒーの苗木を初めて見つけたとされる羊飼い「カルディ」の伝説が残っています。
3.「モカコーヒー」で有名
コーヒー売り場で「モカブレンド」という名前を目にしたことがありませんか?この「モカ」は、主にエチオピア産とイエメン産のコーヒー豆を指すブランド名です。
名前の由来になったのは、かつてイエメンにあった「モカ港」。15世紀以降、エチオピアやイエメンで収穫されたコーヒーはすべてこのモカ港に集められ、世界中へと輸出されていました。「モカ港から来たコーヒー」から「モカ」と呼ばれるようになり、現在でもエチオピアコーヒーの代名詞として使われています。
エチオピアはどんなコーヒー産地?

エチオピアはアフリカ最大のコーヒー生産国であり、世界5位の生産量を誇ります(2023年)。他の産地にはない優雅な味わいが際立つエチオピアコーヒーを生み出す「エチオピア」とはどのような国なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
エチオピアは内陸部「アフリカの角」に位置する高原の国
エチオピア(正式名称がエチオピア連邦民主共和国)は、アフリカ北東部、「アフリカの角」と呼ばれるエリアに位置する内陸国です。
アフリカと聞くとサバンナや熱帯雨林をイメージする人も多いかもしれません。しかしエチオピアの国土の大部分、特にコーヒー生産が行われるエリアは「高原地帯」です。日本の国土の約3倍の広さを持つこの国の中央には、平均標高2,000m〜3,000m級の山々が連なる「エチオピア高原(アビシニア高原)」が広がっています。
コーヒー栽培に最適な気候風土
エチオピアは赤道に近い場所にありますが、平均標高が高いため「常春」と呼ばれるほど過ごしやすい気候の国です。平均気温は20度前後で乾季と雨季があり、コーヒー栽培に最適な条件が揃っています。
大きな寒暖差標高が高いため日中は強い日差しが降り注ぎますが、夜間はぐっと冷え込みます。この昼夜の寒暖差がコーヒーの実(コーヒーチェリー)を凝縮させ、豊かな糖分と酸が蓄えられます。
豊富な雨量
1年のうちにはっきりとした雨季と乾季があり、年間降水量が多いため、コーヒーノキが健やかに成長します。
肥沃な火山灰土壌
コーヒーが育つ土壌は肥沃な赤土になっており、豊富なミネラル分や栄養を与えます。
エチオピアの代表的なコーヒー産地と銘柄

エチオピアには多数の有名なコーヒー産地があります。特に個性豊かで高品質な産地として名高い5つのエリアを紹介します。いずれの産地も名前の頭に「モカ」をつけてブランド名として表記されることが多いです。
同じエチオピア、同じモカでも産地によって味わいは様々です。産地の個性を知ることで、好みの味わいを見つけやすくなります。
1.シダモ(Sidamo)
エチオピアの南部に位置するシダモ地方で生産されたコーヒー全般を指します。標高1,400〜2,200mのエリアで栽培されており、バランスの優れた味わいが魅力です。なお後述する「イルガチェフェ」はこのシダモ地方に含まれています。
他の高級銘柄に比べると手に取りやすい価格なので、普段使いのスペシャルティコーヒーとしても人気の銘柄です。フルーティーな酸味とコクのバランスは、どんな場面にもマッチします。
2.イルガチェフェ(Yirgacheffe)
エチオピアの南部、シダモ地方に位置するイルガチェフェで生まれるコーヒーは「香りの女王」と呼ばれることもあり、世界最高峰コーヒー産地のひとつとされています。
年間降水量が1200㎜に達する水の豊かな地域であり、険しい山々が生み出す特有の環境が繊細な風味を育みます。
その特徴は、アールグレイやジャスミンを思わせる、圧倒的に華やかな香りです。コーヒーとは思えない軽やかさと上品さがあると言われ、レモンなどの柑橘を思わせる酸味も感じられます。
3.ジンマ(Jimma)
エチオピア西部にある、国内最大のコーヒー生産量を誇るエリアです。以前はカッファ(Kaffa)と呼ばれていた地域で、この地域の名がコーヒー(Caffe)の語源になったとも言われています。原生林の中にある野生コーヒー、「フォレストコーヒー」が見られる地域です。
ジンマには、シダモコーヒーとは違った野性味と力強い風味があります。エチオピアの中でも、スパイシーさやどっしりとしたコクの強い銘柄です。
4.ハラー(Harrar)
エチオピア東部にある、伝統的なコーヒー産地です。かつて「モカ港」への経由地となっていたことから、古くから「モカ・ハラー」として親しまれてきました。
乾いた気候を特徴としていることから、伝統的にコーヒーの天日干し(ナチュラル精製)が行われています。
モカらしいマイルドな甘さと酸味、チョコレートを思わせるフレーバーが特徴です。
エチオピアコーヒーの精製方法

コーヒー豆の味わいは、収穫後の「精製方法」によって劇的に変化します。 エチオピアでは主に、伝統的な「ナチュラル(非水洗式)」と、クリーンな味わいを作る「ウォッシュト(水洗式)」の2つが主流です。
▼ナチュラルとウォッシュトの違い
| ナチュラル(非水洗式) | ウォッシュト(水洗式) | |
| 工程 | 果肉がついたままの状態で天日干し乾燥させ、その後に脱穀する。 | 果肉を除去し、発酵槽で粘液質(ミューシレージ)を洗い流してから乾燥させる。 |
| 味わいの傾向 | 濃厚な甘みとボディ感ドライフルーツやベリーなどの熟した果実の風味が特徴 | クリーンで透明感がある 柑橘類やフローラルフレーバーなど、繊細な味わいと雑味の少なさが特徴 |
水を用いないナチュラルは、ハラーなどの水が少ない地域で多く使われている精製方法です。エチオピアコーヒー全体を見ると「ナチュラル」が多いですが、イルガチェフェなどの水源が豊富な地域は「ウォッシュト」を主流にしています。
精製方法の選び方
・果実味や甘さを感じたい人は「ナチュラル」
従来は「安価な精製方法」だとみなされてきたナチュラルですが、近年は技術が向上したことで味わいの評価が見直されています。コーヒー本来の濃厚なアロマを感じたい場合にはナチュラルがおすすめです。
・紅茶のようなクリアなフレーバーや柑橘を思わせる酸を感じたい場合は「ウォッシュト」
エチオピアコーヒーらしい「エレガントさ」を味わいたい場合にはウォッシュトが最適。ウォッシュトの方が雑味が少なくなると言われているので、コーヒーの苦みや重さが苦手な場合もウォッシュトがおすすめです。
エチオピアコーヒーの格付け等級

エチオピアのコーヒー豆は、「G1(グレード1)」~「G9」までの格付け等級があります。これは「エチオピア商品取引所(ECX)」という、政府提携の団体によって厳しく定められた基準です。日本などに輸出されるのは、主にG1~G5の上位グレード豆となっています。
グレードは、「欠点豆の混入率」と「カップテスト(味の評価)」によって得点が付けられ、総合得点によって振り分けられます。80点以上のG1・G2はスペシャルティコーヒーという位置づけになり、高級豆として取り扱われます。(「イルガチェフェG1」など)
エチオピアコーヒーの選び方

好みに合った最高の一杯を楽しむための、エチオピアコーヒーの選び方を紹介します。選び方のポイントは「焙煎度」「シングルオリジンかブレンドか」をチェックすることです。詳しく見てみましょう
焙煎度で選ぶ
エチオピアコーヒーは「浅炒り」で楽しまれることが多いコーヒーです。浅炒りにすることで花のようなアロマやフルーツのような酸が感じられやすくなるため、エチオピアコーヒーらしさを楽しむことができます。
逆に、酸味のあるコーヒーが苦手な方や、カフェオレで楽しみたい方は「中深炒り〜深炒り」を選んでみてください。エチオピアの豆は深炒りにしても独特の甘い香りが残り、ビターチョコレートのような深みのある味わいになります。
シングルオリジンかブレンドかで選ぶ
産地の個性をダイレクトに感じたい場合は「シングルオリジン」を、エチオピアらしい香りを楽しみつつ飲みやすい味わいを求める方は「ブレンド」を選んでみてください。市販のモカブレンドは、ブラジルやコロンビアなどとブレンドして酸味を押さえたマイルドな味わいに調整されている製品が多いです。
コーヒー初心者の方は飲みやすいブレンドコーヒーから試し、味わいの好みが定まったらシングルオリジンにチャレンジしてみるのも良い方法です。シングルオリジンの中でも産地や精製方法によって個性が大きく異なるため、様々な銘柄を試してみるのも楽しい探求の時間になるでしょう。
エチオピアコーヒーのおすすめ製品を紹介
エチオピア産「モカ」を中心に、おすすめの製品を3種類紹介します
UCC DRIP POD モカ&キリマンジァロ

「DRIP POD モカ&キリマンジァロ」は、カプセル式ドリップコーヒーメーカー「ドリップポッド」の専用カプセルです。
エチオピアのモカとタンザニアのキリマンジァロ、アフリカの銘柄2種類を贅沢にブレンドした、華やかな香りとフルーティーな味わいが際立つ一杯です。ジューシーな柑橘を感じる爽やかなフレーバーは、朝の一杯やリフレッシュに最適です。
UCC DRIP POD カフェインレス モカ&ブラジル

※引用:UCC DRIP POD カフェインレス モカ&ブラジル
カプセル式ドリップコーヒーメーカー「ドリップポッド」の専用カプセルからもう1製品をご紹介します。
こちらは「カフェインレス」のモカブレンド。ピーチのような甘みと優しい酸味があり、まるでレモンティーを思わせるようなすっきりとした後味が広がります。
モカ特有のフルーティーで華やかな香りに、ブラジルのコクのある甘みと香ばしさが重なり、カフェインレスであることを忘れてしまうような「産地を感じる」本格的な味わいを楽しめます。カフェインが気になる午後のコーヒータイムにおすすめです。
UCC MOUNTAIN MIST エチオピア・モカ ワイルド・ベレテ・ゲラ

※引用:UCC MOUNTAIN MIST エチオピア・モカ ワイルド・ベレテ・ゲラ
エチオピアの森林で自然のままに育ったコーヒーを使った、贅沢なコーヒー豆です。ワインのような芳醇な香りとオレンジのようなジューシーな甘みを感じる酸味があり、フルーティーさと豊かさが楽しめる上質な一杯に。
ブラックで楽しんだあとは、ベリー系のスイーツとともに感動のマリアージュを楽しんでみてください。
エチオピアコーヒーを美味しく飲む方法

エチオピア(特に浅炒り)の魅力を引き出すハンドドリップのポイントです。
- 1.お湯の温度は高めに設定する(90℃〜92℃)
浅炒りの豆は成分が出にくいため、少し高めの温度でサッと抽出することで、フローラルな香りと酸味を引き出せます。 - 2.挽き目は「中挽き」が最適
細かすぎると雑味が出やすくなったり、フィルターが目詰まりを起こしやすくなったりします。反対に、より甘みや複雑さを出したい場合は中細挽きに調整するのもおすすめです。 - 3.抽出時間は短めにしてクリアな味わいを引き出す
長くお湯に漬けすぎると、せっかくのクリアな酸味が濁ってしまいます。2分〜2分半程度で落とし切るイメージでドリップします。
エチオピアコーヒーで楽しみたいマリアージュ
エチオピアコーヒーそのものを楽しんだら、次にチャレンジしたいのが「コーヒーマリアージュ」。エレガントなフレーバーを生かしたコーヒーマリアージュのアイデアを紹介します。
あまずっぱいフルーツとコーヒーが溶け合う「フルーツタルト」
エチオピアコーヒーはそのフルーティーさゆえに、フルーツを使ったスイーツとの相性が抜群です。レモンやベリーが乗った酸味のあるタルトは、エチオピアコーヒーの風味と溶け合うようなマッチングに。香りと風味の相乗効果でお互いの良さを引き立てます。
唯一無二のアロマと繊細な口当たりを楽しみたい「紅茶のシフォンケーキ」
イルガチェフェやゲイシャ種のコーヒーに特徴的な「紅茶のアロマ」は、同じく紅茶の風味を生かしたお菓子との高度なマリアージュを楽しめます。
イルガチェフェのクリアで繊細な口当たりは、シフォンケーキの溶けて無くなるような繊細な舌触りを邪魔しません。アフタヌーンティーならぬアフタヌーンコーヒーにぴったりの組み合わせです。
現地の飲み方にチャレンジしてみよう!エチオピアとコーヒー

エチオピアの人々にとってコーヒーがどれほど大切なものかがうかがえる、現地のコーヒー文化をご紹介します。
カリオモン(コーヒー・セレモニー)
日本の茶道に似た文化として、エチオピアには「カリオモン」と呼ばれるコーヒー・セレモニーがあります。「カリ」はコーヒーの葉、「オモン」は一緒になるという意味です。これは単にコーヒーを飲むだけでなく、客人を最大限にもてなすための神聖な儀式です。
- ▼カリオモンの手順
- 1.お香を焚き、その香りで場を清める。
- 2.生豆を洗って鉄鍋で焙煎する。香ばしい香りが部屋中に広がり、客人はその煙を楽しむ。
- 3.焙煎したコーヒー豆を細かく砕き、「ジャバナ(Jebena)」と呼ばれる底の丸い独特な陶器のポットで煮出す。
- 4.小さなカップに注ぎ分け、3回に分けてコーヒーを楽しむ。
この儀式は1時間以上かかることもありますが、家族や近所の人と香りを楽しみながら語り合い、絆を深める大切な時間となっています。
塩コーヒー・バターコーヒー
エチオピアの一部地域では、コーヒーに砂糖ではなく「塩」や「バター」を入れて飲む習慣があります。エチオピアには80を超える部族が住んでおり、それぞれのコーヒーの飲み方があるそうです。
味覚には互いを打ち消し合う効果があり、塩のしょっぱさはコーヒーの酸味や苦みを打ち消し味をマイルドにしてくれます。現地流の「塩コーヒー」、ほんの少量の塩から試してみてはいかがでしょうか?
コーヒー豆で結婚を申し込むエチオピアの部族
エチオピアのある部族には、なんと「コーヒー豆をつかって結婚の申込みをする」風習があります。男性側の父親が、息子の花嫁になってほしい女性の家の前にコーヒーの生豆を置くことがプロポーズになるのだとか。
女性側の家は置かれた豆でコーヒーを淹れ、お断りの場合は「もらったコーヒーは水だった」と伝え、承諾する場合は「コーヒーだった」と伝えるといいます。生活にコーヒーが根付いているエチオピアならではの風習ですね。
まとめ|エチオピアコーヒーで至福の一杯を見つけよう
華やかな香りとフルーティーな酸味、そして長い歴史と文化を持つエチオピアコーヒー。 「モカ」として親しまれるその味わいは、産地や精製方法によって驚くほど多彩な表情を見せてくれます。
まずは手軽なブレンドから試してみるもよし、シングルオリジンで産地ごとの個性に浸るもよし。ぜひ自分だけのお気に入りのエチオピアコーヒーを見つけて、優雅なコーヒータイムを過ごしてみてください。