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赤ワインにはお肉、白ワインにはシーフードを合わせて――というように、フードと飲み物を一緒に合わせたときにお互いの持つおいしさを引き立てて味わう組み合わせ方を「フードペアリング」といいます。フランス語では「マリアージュ」とも呼ばれており、言葉の通りお互いを引き立てあい、高め合う素晴らしい出会いを表しています。
実は、ワインと同じようにコーヒーも相性のよいフードを組み合わせて「コーヒーマリアージュ」を楽しむことができます。フードとコーヒーお互いが持っている香りや風味をより引き立たせたり、隠れていた風味を引き出してくれる、素晴らしいコーヒーマリアージュは、1+1=2だけではない相乗効果を生み出し、より豊かで、新しいコーヒーの味わいの世界へと誘ってくれるのです。
コーヒーマリアージュの基本
「コーヒーマリアージュ」の基本となる考えとして、共通する個性を持ったもの同士を合わせる「同調」と、足りないものを補い合う「補完」があります。さわやかな酸味のあるコーヒーに柑橘類をあわせることで、フレッシュさを強調する「同調」、きりっとした苦味のあるコーヒーに、乳製品のマイルドなコクを合わせる「補完」など、お互いの味の特徴を活かした、おいしさを生む法則です。
「同調」と「補完」
「同調」とは、同じ強さ、同じ性質のものを合わる組み合わせ方のこと。 本来備わっていた風味がさらに引き立ち、隠れていた風味が引き出されます。 「補完」は、お互いの性質を補い合うものを合わせる組み合わせ方のこと。 お互いに少ない要素の味わいを補いあうことで、味わい全体に深みが増します。
コーヒーマリアージュの味わい方
コーヒーマリアージュで広がる香りや風味は、コーヒーとフードを交互に味わうことで感じられるものです。最大限に楽しむには、口に運ぶ順番や量に気を配ることが大切。まずはフードをひと口楽しんだ後、コーヒーを含んで口の中で香りと味わいが重なり合う瞬間を感じてみましょう。
次のステップを意識することで、コーヒーとフードの風味が引き立ち、味わいの広がりを最大限に楽しむことができます。
Step.1 コーヒーをひと口: まずはコーヒーを一口飲み、口の中全体に味わいをなじませる。
Step.2 すぐにフードをひと口:コーヒーの風味が口の中に残っているうちに、少量のフードをひと口含みます。
Step.3 もうひと口コーヒーを重ねる:味わいを重ねるようにコーヒーをひと口含んだあと、フードとコーヒーを交互にゆっくりと口に運びます。 このように、3つのステップを試してみると、少しずつ変わる味の層が感じられます。食材の味わいがコーヒーの風味とどのように調和するかを意識すると、組み合わせの楽しさが深まります。
【組み合わせパターン1】
コーヒーの味わいから相性の良いフードを選ぶ
コーヒーを基準にフードを選ぶときは、コーヒーがもつ個性的な味わいを引き出すフードを選ぶと風味が一層広がります。
フルーティーなタイプのコーヒーと相性の良い食べ合わせ
フルーティーで華やかなフレーバーが特徴のエチオピアやタンザニア産のコーヒーや、フローラルで甘い香りが特徴のゲイシャ品種のコーヒーには、柑橘系のタルトやブルーベリーやいちごを使ったケーキ、ヨーグルトベースのスイーツがおすすめ。
「同調」の原理を活かして、フルーツの酸味と香りがコーヒーと調和し、コーヒーがもつ風味の個性である、「フルーティーな酸味」が引き立ち、爽やかな味わいのコーヒーマリアージュを楽しむことができます。
苦味マイルドなタイプのコーヒーと相性の良い食べ合わせ
バランスの取れた苦味とまろやかなコクが楽しめる、コロンビアやグァテマラ産のコーヒーには、ミルクチョコレート、ナッツを使ったのスイーツ、バナナブレッドがおすすめ。
「同調」の原理を活かして、ミルクチョコレートやナッツのクリーミーなコクと甘さがコーヒーの柔らかな苦味、香ばしい風味と相性抜群です。バナナブレッドとあわせると、バナナの自然な甘さがコーヒーの穏やかな酸味や軽やかな苦味を柔らかく包み込むことで、後味に残るまろやかさが増し、香りや風味の層が豊かに広がります。
苦味濃厚なコクタイプのコーヒーと相性の良い食べ合わせ
しっかりとした苦味とコクが特徴のブラジルやインドネシア産の深炒りのコーヒーには、甘さがしっかりとした和菓子、キャラメルタルト、黒糖を使った焼き菓子がおすすめ。「補完」の原理を活かして、濃厚なスイーツの甘さが重なり合うことで、味わい全体に奥行きが生まれバランスが整い、コーヒーのローストナッツのような香ばしい風味やカカオのような苦くスパイシーな風味が引き立ち、贅沢な香りの余韻を楽しめます。
【組み合わせパターン2】フードの味わいから相性の良いコーヒーを選ぶ
次に、食べ物を基準にしてコーヒーを選ぶ方法をご紹介します。
コーヒーを基準にした合わせ方と同じ考え方で組み合わせるのが基本ですが、フードの味わいに合わせて、コーヒーの風味を補完または強調できるバランスを意識することがポイントです。
朝食やおやつの定番パンと相性の良いコーヒー
朝食にパンのお供にコーヒーを合わせて味わいたいという方は多いのではないでしょうか?明日からでも試しやすい身近なパンとのおすすめの組み合わせをご紹介します。
<バタートースト>
ふんわりと甘い香りのバターを乗せたトーストには、香ばしいローストナッツのような風味や黒蜜のような甘い余韻の感じられる、ブラジル産のコーヒーがおすすめ。軽やかな苦味と風味がバタートーストと合わさることでバランスが整い、風味がより立体的に感じられます。
<クロワッサン>
バターの風味と塩味がほのかにきいたクロワッサンには、まろやかなコクと甘みを感じるコロンビアやグァテマラ産のコーヒーをミルクで割ってカフェオレで合わせて。
ミルクのコクと甘みがさらに足されることで、クロワッサンのバターの風味の印象が優しくなり、コーヒーの香ばしい風味より印象的に感じられます。
<カレーパン>
濃厚でコクのあるカレーソース、スパイスの香りを味わうカレーパンには、濃さに負けない、コクと苦味のあるコーヒーを合わせて。インドネシア産の深炒りのコーヒーをあわせると、コーヒーのもつスパイシーなフレーバーが重なり合い、リッチな風味を味わうことができます。
食材との相性を考えた食べ合わせ
身近な食材とコーヒーの相性を知ると、コーヒーの楽しみ方に幅が広がり、さまざまな組み合わせに応用することができます。味わいのバリエーションが豊富なおやつ選びの参考に、フルーツとチョコレートをテーマにご紹介します。
<柑橘類やベリー系 爽やかなフルーツ>エチオピアやタンザニアなどアフリカ産のフルーティーな浅炒りコーヒーが合います。これは、柑橘やベリーの酸味がコーヒーのもつ爽やかな酸味と共鳴し、全体の味わいがよりクリアで華やかになるためです。酸味が重なることで、コーヒーのもつ爽やかでフレッシュフレーバーが口の中に広がります。
<バナナやマンゴー 甘みの強いフルーツ>
バナナやマンゴーのようなトロピカルフルーツには、コロンビア産のまろやかな中炒りコーヒーがおすすめです。トロピカルフルーツ特有の豊かな甘さが、コーヒーのまろやかなコクと調和することで、甘さが引き立ち、一体感のある優しい味わいを楽しむことができます。
<ミルクチョコレート>
ミルクチョコレートには、コロンビアやグァテマラの中炒りコーヒーがぴったりです。ミルクチョコレートのクリーミーな甘さとまろやかな風味が、中炒りコーヒーの軽やかな苦味と優しいコクに溶け合い、よりリッチでクリーミーな味わいに仕上がります。コーヒーがチョコレートの風味を引き立て、口の中で甘みがまろやかに広がります。
<ビターチョコレート>
ビターチョコレートには、ブラジルやインドネシアの深炒りコーヒーがおすすめです。ビターチョコレートのもつ、強いカカオ感と深炒りコーヒーのしっかりとした苦味が重なり合い、甘さと苦味のコントラストが際立ち、重厚感のある贅沢な味わいになります。この組み合わせでは、ビターチョコレートの風味がコーヒーの濃厚なコクによって引き締まり、後味に持続する満足感が楽しめます。
【応用編】
甘いおやつ以外の食事と合わせる食べ合わせ
相性を考えて組み合わせることができれば、コーヒーは食中にも楽しむことができます。お酒のペアリングと同じように、コーヒーを食事に合わせてさまざまな料理とのマリアージュを楽しんでみてはいかがでしょうか?
<肉料理>
しっかりとした味付けの肉料理には、深炒りのブラジルやインドネシア産コーヒーがぴったりです。コーヒーの深いコクと苦味が肉の旨味と調和し、お互いの風味を引き立てます。特に、コーヒーのロースト感がグリルやローストされた肉の香ばしさと相性が良く、力強い味わいが口の中に広がります。
<シーフード>
魚介の旨味と塩味がベースのシーフード料理には、フルーティーなエチオピア産の浅炒りコーヒーがおすすめです。コーヒーの明るい柑橘のような果実感と重なり、爽やかな余韻が生まれます。魚介の新鮮な味わいを引き立て、軽やかでさわやかなペアリングが完成します。
<乳製品を使った料理>
生クリームを使ったクリームシチューのようなクリーミーなコクのある料理には、コロンビアやブラジルの中炒りコーヒーが最適です。中炒りコーヒーの軽い酸味が、生クリームの濃厚な風味を引き締め、全体のバランスが整います。コーヒーのもつ柔らかいコクがバランスを整え、酸味とまろやかさの調和が生まれるため、口当たりもさっぱりと感じられ、次の一口が楽しみになる組み合わせです。
<だしの風味を味わう和食>
だしの旨味がある和食と相性の良いコーヒーは、穏やかな酸味とコクを持つコロンビアやグァテマラの中炒りコーヒー。だしの繊細な風味を邪魔せず、コーヒーの軽い苦味が全体の味わいをさっぱりと引き締めます。和食特有のやさしい旨味が、コーヒーのほのかな酸味とコクによってより引き立ち、上品な調和が楽しめます。
お気に入りのコーヒーマリアージュを探してみませんか?
コーヒーとフードお互いの持つおいしさを引き立てて味わう「コーヒーマリアージュ」。お気に入りのコーヒーマリアージュを見つけることで、コーヒータイムがより豊かで楽しいものになります。コーヒーとフードを組み合わせる際には、味わいを引き立てる「同調」や「補完」のコツを活かし、それぞれの特徴を楽しみましょう。
日常のシーンに合わせて、自分好みのコーヒーとフードを組み合わせることで、リラックスできるひとときや新しい発見が生まれます。ぜひ、自分だけのお気に入りマリアージュを見つけて、コーヒーのある暮らしを楽しんでみてはいかがでしょうか?