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世界第2位のコーヒー生産量を誇る東南アジアのベトナム。ブレンド用の安価なコーヒー豆というイメージが強かったベトナムコーヒーですが、近年では「ファインロブスタ」と呼ばれる高品質な豆や、スペシャルティコーヒーの原料になるアラビカ種で注目を浴びていることをご存知でしょうか?
本記事では、ベトナムコーヒーの味わいの特徴から産地の個性まで、その魅力を余すことなく解説します。
なおこの記事では、ベトナムのコーヒー文化に欠かせないコンデンスミルク入りの「ベトナムコーヒー(カフェ・スア・ダー)」の作り方や現地での楽しまれ方についても解説しています。レシピを知りたい方は、こちらからジャンプしてご確認ください。
コーヒー産地ベトナムの特徴|世界を支えるロブスタの一大産出国

ベトナムは、ブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー生産国です。しかしベトナムは「ただコーヒーの生産量が多い」だけではない、他のコーヒー産地とは明確に異なる個性があります。ベトナムコーヒーを語るうえで欠かせない3つのポイントを押さえておきましょう。
1.ロブスタ種の圧倒的生産量と独特の風味
ベトナムで栽培されているコーヒーのうち、およそ9割以上が「ロブスタ種(カネフォラ種)」だとされています。
世界的に流通している「アラビカ種」が、酸味と花のような香りを特徴とするのに対して、ロブスタ種は「力強い苦味」「穀物のような香ばしさ」「重厚なボディ」が持ち味です。
カフェインもアラビカ種の約2倍含まれており、ブレンドすることでコーヒー全体の味わいをどっしりと支え、骨格に厚みを出す役割を果たしています。※
コンデンスミルクをたっぷりと加えた甘い「ベトナムコーヒー(カフェ・スア・ダー)」は、このロブスタ種の強い苦味を飲みやすく味わうための知恵から生まれた現地の飲み方です。
※ロブスタ(カネフォラ)とアラビカの違いについてはこちらの記事で詳細を解説しています。
2.世界第2位、ロブスタ種では世界第1位の生産量
国連食糧農業機関(FAO)のデータによると、ベトナムは長年、世界のコーヒー生産量ランキングで堂々の第2位に君臨し続けています。
▼2024年コーヒー生産量国別ランキング
| 順位 | 国名 | 生産量(トン) |
| 1 | ブラジル | 3,387,724 |
| 2 | ベトナム | 2,015,289 |
| 3 | コロンビア | 839,847 |
| 4 | インドネシア | 807,578 |
| 5 | エチオピア | 575,696 |
※国連食糧農業機関(FAO)の統計データを基に作成
特にロブスタ種に限れば、ベトナムは世界最大の生産国です。私たちが普段口にするインスタントコーヒーや缶コーヒー、スーパーで売られているブレンドコーヒーの多くに、ベトナム産の豆が使われており、世界のコーヒー産業の土台を支えている存在と言っても過言ではありません。
3.量から質への目覚ましい進化を遂げている注目産地
これまでは「安くて大量」がベトナムコーヒーの代名詞でしたが、現在は生産者の努力によって高品質なコーヒーが次々と生まれています。
特に近年は、気候変動の影響でアラビカ種の栽培が難しくなっていると言われており、病害虫に強く低地でも育つロブスタ種の価値が見直されています。ベトナムでは多くの生産者がロブスタの可能性に注目し、スペシャルティコーヒーとして扱われる品質の「ファインロブスタ」を普及させる取り組みが進んでいます。
また、限られた高地のエリアでは高い評価を受けるアラビカ種も生産されるようになってきています。このように、ベトナムは今まさに大きな盛り上がりを見せているコーヒー生産国のひとつなのです。
ベトナムはどんな国?コーヒー栽培の環境や歴史

東南アジアの東端に位置し、南北に細長い国土を持つベトナム。コーヒー栽培に適したその環境と歴史が、現在のコーヒー大国としての地位を築きました。
コーヒーを育む火山性の肥沃な土壌と雨の恵み
ベトナムのコーヒー栽培の中心地は、中部に広がる高原地帯です。 この地域は、火山活動によって生まれた「赤い玄武岩質」で覆われています。この土壌はミネラルが豊富で水はけが良く、コーヒーの木が根を張るのに最適な条件を備えています。
また熱帯モンスーン気候に属しており、雨季と乾季の明瞭なサイクルがある点もコーヒーにとって理想的な環境です。十分な雨はコーヒーをみずみずしく育て、乾季があることで花が落ちることなく実を成熟させることができるのです。
フランス植民地時代から始まった栽培の歴史
ベトナムでコーヒー栽培が本格的に始まったのは、19世紀中頃の1857年のことです。フランス人宣教師が布教の際に苗木を持ち込んだことが始まりと言われています。その後、フランス植民地時代に本格的なプランテーションが開発され、主に中部の高原地帯に拡大しました。
コーヒーの畑は南東部や中部地方にも広がり、2001年には現在と同じ「世界第2位のコーヒー生産国」としての地位を確固たるものにしました。
ベトナムの「ファインロブスタ」と「アラビカ」

近年多くのコーヒーバイヤーが注目しているのが、ベトナムの若手生産者を中心に生産量を増やしている「ファインロブスタ」、そして一部の高地で生産される「アラビカ種」の台頭です。
これまでのベトナム・ロブスタの常識を覆す、新しいトレンドを深掘りしてみましょう。
ロブスタの最高峰「ファインロブスタ」とは?
「ロブスタ=苦い」という偏見を打破するために生まれたのが、ファインロブスタです。
ファインロブスタとは、CQIと呼ばれる国際的なコーヒー品質協会が制定した基準で、80点以上のスコアを獲得した高品質なロブスタ種のことを指します。ファインロブスタには、次のような特徴があります。
⚫︎完熟豆のみをハンドピック:未熟な豆を徹底的に排除し、真っ赤に熟したコーヒーチェリーだけを収穫します。
⚫︎最新の精製方法:アラビカ種で用いられる「ウォッシュド」だけでなく、ワインのような風味を生むとされる「アナエロビック(嫌気発酵)」など、最新の精製技術が導入されています。
⚫︎従来の印象を覆すクリーンな味わい:高品質なファインロブスタは、従来の麦のような香ばしさに加え、「チョコレートのような甘み」「フルーツを思わせる香り」など、複雑な風味を持っています。
評価を高めるベトナム産アラビカ

ロブスタの陰に隠れがちですが、近年急速にレベルアップしているベトナム産のアラビカ種も見逃せません。中部のラムドン省ダラット地方で採れるアラビカ種のコーヒーは、その高い標高と寒暖差から、良質な酸味とボディが特徴とされています。
UCCはベトナムの「アラビカ種」の可能性に着目し、2015年から「UCC品質コンテスト in ベトナム」を開催しています。2025年のコンテストで優勝したアラビカ種のコーヒー『ゴー・ティ・ゲ』は、フルーティでありながらナッツやチョコレートの風味もある複雑な風味が評価されました。
「UCC品質コンテスト in ベトナム」について詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。
UCC品質コンテスト|UCCのサステナビリティ | UCC上島珈琲
ベトナムの代表的な二大コーヒー産地

広大なベトナムの中でも、特に重要な2つの産地を紹介します。
1.ダクラク省(Dak Lak)
ベトナムコーヒーの中心地とも言えるのが、ダクラク省です。州都のバンメトートにはコーヒー博物館があったり定期的にコーヒーフェスティバルが開催されるなど、コーヒー文化が栄えています。
⚫︎特徴:赤い玄武岩質の肥沃な火山性土壌が広がり、高品質なロブスタ種の中心産地です。
⚫︎味わい:生産の多くがロブスタ種で、力強くしっかりとしたボディが特徴です。高品質なものは、ナッツのような香ばしさと、ダークチョコレートのようなコクが感じられます。
2.ラムドン省(Lam Dong)
ラムドン省にあるダラットは、標高約1,500mという高地にありベトナムにおけるアラビカ栽培の拠点です。また、ベトナムにおけるファインロブスタの先駆農園も、ラムドン省に位置しています。
⚫︎特徴:高地のエリアは涼しい気候と安定した気温が特徴で、アラビカ種の栽培に理想的な環境です。
一方南部バオロク周辺は標高750m〜800m程度の場所にあり、主にロブスタ種が栽培されています。
⚫︎味わい:特に高地で栽培されるアラビカ種は、フルーティーで柔らかな酸味と程よい甘みを含んだ繊細な風味が特徴です。
現地で楽しまれるコンデンスミルク入り「ベトナムコーヒー」とは?

ベトナム市街を歩くと、コーヒーを楽しむたくさんの人々が目に入ります。彼らが飲んでいるのはいわゆる「ベトナムコーヒー」として知られている、コンデンスミルク入りのロブスタコーヒー。ロブスタ種ならではの個性的な味わいを活かした、伝統的な飲み方です。現地での呼び方や、欠かせない器具について紹介します。⚫︎カフェ・スア・ダー(Cà phê sữa đá):ベトナム語で「カフェ=コーヒー」「スア=ミルク(コンデンスミルク)」「ダー=氷」を意味します。つまり、コンデンスミルク入りのアイスコーヒーのことです。ホットの場合は「カフェ・スア・ノン」と呼ばれます。
⚫︎カフェ・フィン:ベトナムコーヒーは、「フィン」と呼ばれる金属製の独自のフィルターを使って淹れられています。ペーパーフィルターを使わず、金属の穴からゆっくりと時間をかけて抽出するため、豆の油分がそのまま残り、非常に濃厚でトロリとした質感に仕上がります。
ロブスタ種特有の「焦がした麦のような香ばしさ」と「ガツンとくる苦味」は、濃厚なコンデンスミルクの甘みと混ざり合うことで、キャラメルを思わせる味わいへと変化します。
「カフェ・スア・ダー」の作り方
ベトナム産ロブスタ種がブレンドされた深炒りの豆を手に入れたなら、ベトナムコーヒー「カフェ・スア・ダー」を作ってみましょう。コクのある苦味と濃厚なミルクのコクがマッチし、デザートに最適な一杯です。
- ▼作り方
- 1.グラスの底にコンデンスミルクを30gほど入れる。
- 2.コーヒー(できればカフェ・フィンで抽出したもの、なければ濃いめにドリップしたもの)を注ぐ。
- 3.よくかき混ぜてから、たっぷりの氷を入れる。
カフェ・スア・ダーに欠かせない金属フィルター「カフェ・フィン」は、大手通販サイトを探せば1,000円以下などで手に入れることができます。本格的な淹れ方にチャレンジしてみたい人は、ぜひカフェ・フィンを使って濃厚なベトナムコーヒーを楽しんでみてください。
おすすめの製品をご紹介
続いては、ベトナム産のコーヒーをブレンドに使用したおすすめの製品を4種類紹介します。いずれも味わいの傾向に個性があるため、好みの風味のものを選んでみてください。
バランスの取れた味わい:鑑定士の誇りスペシャルブレンド

※引用:UCC DRIP POD 鑑定士の誇り スペシャルブレンド
世界を旅するように味わえるカプセル式コーヒーマシン「ドリップポッド」専用のカプセル「鑑定士の誇り スペシャルブレンド」は、UCCコーヒー鑑定士がブレンドを監修したこだわりのブレンドコーヒーです。ベトナム産のコーヒー豆と、2種類のブラジル産コーヒーが使用されています。
メープルシロップやブラウンシュガーを思わせる柔らかいながらもコクのある風味があり、ストレートはもちろんミルクを使ったアレンジにもぴったりの一杯です。
アイスコーヒー好きなら:UCC DRIP POD 鑑定士の誇り アイスコーヒー

※引用:UCC DRIP POD 鑑定士の誇り アイスコーヒー
普段からアイスコーヒーを飲む方におすすめしたいのが「鑑定士の誇り アイスコーヒー」です。ダークチョコレートやカカオの深い苦味とコクが、アイスコーヒーの味をギュッと引き締めてくれます。
苦味やコクが強く冷やしても味がぼやけないため、たっぷりと氷を入れて楽しむ「カフェ・スア・ダー」のベースとしても最適なブレンドコーヒーです。
ミルクアレンジに:UCC DRIP POD 鑑定士の誇り 炭焼珈琲

ベースはブラジル産コーヒー、アクセントにベトナム産コーヒー豆を加え、スパイシーな風味を引き立てたコーヒーです。熟練の焙煎技師が時間と手間をじっくりとかけて仕上げました。
炭火焙煎ならではの深い苦味と濃厚で甘い余韻は、ミルクを使ったアレンジにぴったり。コンデンスミルクを加えれば、ベトナムコーヒーらしい焦がしキャラメルのような風味が楽しめます。
コク深く豊かなボディを感じるなら:ヒルス リッチブレンド 210g(粉)

「単品焙煎」で、ベトナム産とブラジル産それぞれのコーヒー豆の個性を最大限に引き出した一杯です。
炒りたてのコーヒーのような香ばしいアロマと、コク深く芳醇な余韻が口いっぱいに広がります。ブラック、ミルク入り、アイスコーヒーなど、様々なアレンジで異なる質感を楽しんでみてください。
ベトナムコーヒーを美味しく楽しむ方法

ベトナム産の豆を手に入れたら、そのポテンシャルを最大限に引き出す淹れ方を試してみましょう。
1.ファインロブスタやアラビカなら「ブラック」で
専門店で「ファインロブスタ」や「ダラット産アラビカ」のシングルオリジンを購入した場合は、ぜひブラックのホットコーヒーで味わってみてください。ドリップするときのコツは、90℃前後のお湯で、少しゆっくりめにドリップすること。ロブスタ特有のチョコレートのような甘い香りと、厚みのあるボディをダイレクトに感じられます。
2.オリジナルブレンドのベースにする
ベトナム産のロブスタ種は、ブレンドにおいて「ボディを補強し、香ばしさを加える」という非常に重要な役割を果たします。例えば、コクや酸味のバランスがとれたコーヒーブレンドを作りたい場合は、次のような比率で豆をブレンドするのがおすすめです。
コロンビア4:ブラジル3:モカ2:ベトナム(ロブスタ)1
ベトナム産ロブスタ種の豆があれば、自分好みの苦味やコクに調整したり、風味に香ばしさを足すなど、ブレンドの幅が大きく広がります。
ブレンドコーヒーの黄金比や味わいのタイプ別のおすすめブレンド例を知りたい方は、以下の記事もあわせてチェックしてみてください。
ブレンドコーヒーの疑問に答えます!アメリカンとの違いや黄金比など
まとめ|進化を続けるベトナムコーヒーの新しい扉を開こう
ベトナム産のロブスタ種ならではの力強い苦味とコクを楽しみたいなら、伝統的な「カフェ・スア・ダー」を。
ベトナムのスペシャルティコーヒーとして豆本来の個性を味わいたいなら、最新の「ファインロブスタ」や「アラビカ」を。
どちらもベトナムという土地が育む唯一無二の魅力です。まずは身近なブレンドコーヒーの中に隠れたベトナムの力強さを感じてみることから始めてみませんか?